技術コラム
失敗しない製品開発!試作段階から量産を見据えた対策とは?
2025.04.02
試作から量産へのスムーズな製品開発は、多くの製造業にとって極めて重要なテーマです。しかし、実際にはこのプロセスで多くのトラブルが生じやすく、特に射出成形においては金型のトラブルがその代表例です。本稿では、試作から量産へ移行する際の課題として頻出する金型トラブルや材料選定に関する問題点を整理し、それらを回避しスムーズに量産移行を行うためのポイントについて解説します。
アンダーカット形状における問題
アンダーカットとは、金型から製品を抜き出す際に障害となる凸凹形状のことです。試作段階では簡易的な金型(例えばアルミ製の簡易型)を用いることが多く、多少のアンダーカットでも無理抜きが可能であり、製品設計段階で問題が顕在化しない場合があります。しかし、量産段階では高硬度の鋼型を使用するため、無理抜きが困難であり、そのまま設計が移行されると離型不良や製品破損を引き起こします。
この問題を防ぐためには、製品設計の初期段階でアンダーカット部を明確に識別し、スライド機構や入れ子などの構造を採用するか、そもそも設計段階からアンダーカットを避ける設計思想を取り入れることが重要です。
材質の違いに伴うトラブル
試作時には成形性やコストの観点から汎用的な樹脂を使用する場合が多いですが、量産時には耐久性や性能、コスト面で最適な材料に切り替えることが一般的です。しかし、材料の変更に伴い収縮率や流動性、熱伝導性が異なるため、製品寸法のずれやソリ、ヒケが発生するリスクが高まります。
特に収縮率の違いは製品の寸法精度に大きく影響し、量産開始後に設計変更が必要となれば多大なコストと時間のロスが生じます。これを防ぐためには、試作段階で量産を見越した材料選定を行い、予測される収縮率を考慮した製品寸法設計を実施する必要があります。また、流動解析ソフトなどのシミュレーションを活用することで事前予測精度を高めることができます。
金型の冷却およびゲート設計に関するトラブル
試作段階では簡易なゲート設計や冷却回路を採用することが一般的であり、量産型に移行する際にゲート位置やランナー配置が変更になることがあります。この際、適切にゲート位置を選定していないと、樹脂の充填バランスが崩れて製品の品質に悪影響を及ぼすことがあります。
冷却設計もまた量産品質に大きな影響を与えます。冷却が不均一だと製品に反りや寸法ばらつきが生じ、サイクルタイムの延長を招くことになります。そのため、試作段階で冷却回路の設計を量産を前提として検討し、適切な金型温度制御が可能な構造とすることが望まれます。
試作型と量産型の寸法・表面品質の再現性
試作型では簡易的な加工や表面処理に留めることが多く、寸法公差や表面品質が実際の量産型と大きく異なるケースがあります。量産型に移行した際に、このギャップにより製品仕様に適合しない問題が頻出します。
量産型製作前に試作品の寸法評価や機能評価を徹底的に行い、求められる公差や仕上げレベルを明確にすることが重要です。また、試作型段階から量産型の仕様を想定した試作加工を実施し、量産段階での再現性を向上させることが推奨されます。
スムーズな量産移行を実現するためのポイント
上記のようなトラブルを防ぎ、試作から量産へのスムーズな移行を実現するためには、以下のポイントが重要となります。
- 設計段階から金型の離型性やアンダーカット形状を十分検討し、設計レビューを行う。
- 試作段階で量産で使用する樹脂の特性を理解し、試作時にも量産材を一部用いてデータを蓄積する。
- 試作時の成形条件や製品評価データを量産移行の判断材料として有効活用する。
- ゲート位置や冷却設計について、量産を意識した設計を試作段階から取り入れる。
- 試作型の製作時点から量産型の仕様を想定し、寸法や表面品質の検証を十分行う。
これらの対策を製品開発プロセスの早期から実践することにより、量産時のトラブルを予測し、事前に回避することが可能になります。その結果として、試作段階から量産までの製品開発プロセスが迅速化され、市場投入までの期間短縮やコスト削減といった具体的なメリットが生まれます。
試作段階の工夫と準備が、量産移行後のトラブルを最小化する重要な鍵となるのです。
弊社では、試作段階から量産を想定した仕様設計支援を行っており、スムーズな試作から量産への移行が可能です。お気軽にご相談ください。